エクスペリエンス

管理人が気に入っているゲームやら書籍について徒然と語っていく予定。まあ、一応他所と差異をつけられるようにしたいなぁ、と。独断と偏見がエッセンス。

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最新鋭の装備を手に、数々の期待を集めて結成されたペイルウィング隊の船出は、痛烈な痛手と共に始まった。
ロンドンのペイルウィング隊はまともな統制を取れぬまま各個に巨大生物郡へ突撃し、民衆の多くを逃がすことに成功したものの、隊員のほとんどが帰還することは無かった。

(ペイルウィング隊の運用は、歩兵やヘリよりも騎兵に近い。温存し、かく乱し、決戦に際し横背から突撃、殲滅する。それまでに出来ることは陸戦隊の支援くらいしか無い)

彼女は思う。大した精鋭部隊だ。こんな半端なものを作る余裕があるなら、限られたエネルギーユニットを陸戦隊に渡してしまった方が良いのかもしれない。
とはいえ、部隊は生まれ、かく言う自分もその結成当初から参加していたのだ。文句を言う段階はとうに過ぎている。

心の中でため息をつき、辺りを見渡す。

郊外の、比較的緑の多い住宅地。その彼方に、黒い巨体がうごめいている。
日本にも姿を現し始めた巨大生物の群れの一つだ。
数は少ないが、これが氷山の一角であることはまず間違い無いだろう。
左翼にEDF陸戦隊が展開し、右翼にペイルウィング隊が4、5人ずつ屋根の上に並んで待機している。合わせて兵数100人程だろうか。
敵の規模と比較して、度を越してこちらが多いのはロンドンでの惨事を見た日本支部が実戦経験を穏やかに積ませようとしたからだろう。

「隊長、出撃命令が下りました。指示をお願いします」

一つ頷くと、もう一度脇に並ぶ陸戦隊の顔を見おろしていく。
大半が新兵の彼ら。興味、期待、不安、緊張。こちらを見上げる彼らの表情は様々だった。

(兄も、英雄さんもこんなだったのかな)

兄のあんな顔は想像できなかったし、彼の顔は変に記憶の中でぼやけていた。
そういうものかもしれないと、頭の片隅で誰かが言うのをきっかけに、それら全てをしまい込む。

手をあげ、一言だけ前進と叫んだ。



号令と共に28名のペイルウィングが飛び出した。
屋根から屋根へ、妖精のように軽やかに跳躍を繰り返す。
秩序だったその機動は、高い錬度と士気を感じさせる。少なくとも、陸戦隊員達の目には。

「中々壮観ですね。期待できるのでは?」

相川は、こちらは徒歩行軍しながら話しかけてくる。

今回の作戦では、ペイルウィング隊が一撃したのち後退、釣られて出てきた蟻どもを陸戦隊と共に挟撃、殲滅する予定だ。単純で想定外のこともまずおこらないだろう。
勝利は約束されていると言える。

「ああ。ロンドンの時とは状況も違うしな」

言葉とは裏腹に山城の口調は重い。

「何か気になることでも?」

「ペイルウィングを率いていたのは、ペイ子だった。」

「ロンドンでお会いした方ですね。それがどうかしましたか?」

特別に意匠を施されたAS-99を肩に担いでのろのろと歩く山城を他の陸戦隊員達が追い抜いて行き、配置に着く。その中の数人が追い抜く際に山城の方を振り返り、ニュースで何度も見た顔を目にし、興奮と共に前を向いて走って行く。

「彼女のこと知ってるんだろ?輸送機に乗り込んでたことをお前が知らないはず無いし」
そう言うと、相川は苦笑しながら首肯した。

「知っています。ですが、言えません。秘密と言う程のことでは無いと私は思いますが、彼女が明かさない以上は私の口からは言えません」

山城は、ふーん、と気の抜けた返事をするだけだった。
それきり黙ってだらだらと歩いて行く。
陸戦隊員達が待ち伏せる丘を越え、一人ぶらぶらと町並みに消えていった。
その様子を見ていた隊員の一人が相川に怪訝な顔で尋ねる。

「良いのですか?山城隊員を一人で行かせて。我々はこの場で待機するはずでは・・・」

「彼は前大戦の英雄です。好きにさせて下さい」

はぁ、と気の抜けた返事を尻目に、自分も配置に着く。それから今の言葉に心の中でおまけを付け加えた。

(英雄の前に古代の、とか石器時代の、が付きますけどね)











「チャージ!行け、行け!!」

長距離跳躍した前衛2小隊、8名が道路上を飛行しつつレイピアを斜め下方に照射、突撃する。
ペイルウィングの基本戦術の一つである、レイピア・レーザーによるチャージは奇襲ならば瞬間的に大打撃を与えることができるが、照射するエリアが広い為に大人数での用兵は不可能だ。
さらに、一撃したら援護無しに再び距離を置くことが難しい諸刃の刃。特攻でないなら必殺のタイミングでなくてはならない。リスクは非常に高い。
初めから敵位置が判明している今回は迫撃砲を使っても良かったが、訓練の為にペイルウィング隊が一番槍を勤めることになったのだ。

(帰ってきなさいよ、演習で死ぬよりはマシだけど死んで胸を張れるような場面じゃないんだから・・・!)

一撃したペイルウィング達が屋根に着陸し、過熱したパワーユニットを休ませるための僅かな時間を応戦か足で稼がなければならない。
感情を持たず、混乱もしない蟻どもの反応は早い。黒焦げになった仲間を押しのけ、窓や雨どいに足をかけて上に上がってくる。

「二の矢、攻撃開始!」

そこに、急造されたペイルウィング用支援火器である粒子バルカン砲が通りの蟻どもに叩きつけられる。
距離があるため大したダメージにはならないが、足止めには十分である。
屋根に上がった小数の蟻も四人で四方をカバーしているペイルウィング隊員によって駆逐され、パワーユニットもそろそろ冷却が済むころだ。

(これで前衛と共に後退できればお終い。十字砲火で止めが刺せる)

ヘルメットのバイザーに映る戦術画面を見ながらペイ子は順調に進む作戦に安堵しかけた時。

視界に舞い上がる黒点が映る。ペイルウィングにしては大きい。なにより、あんな禍々しい羽音をさせるはずが無い。

友軍を表す白い光点がこちらに接近している。が、明らかに新たな敵の方が早い。あの羽蟻どもの方が。

どうする?二小隊を見捨てて撤退するか?それとも合流した後に対空戦闘をしつつ後退するか?実戦経験の無いペイルウィング隊には円盤ファイター用のマニュアル通りの対処しかできない。後者は無謀かもしれない。あの敵は円盤よりもずっと小回りが利きそうだ。
突然の事態に焦りを隠せない隊員達の視線が自分に集まるのを感じる。
決断しなければならない。一秒を競う事態だ。

「・・第一、二小隊は前進、前衛に合流し追いすがる羽蟻どもを牽制する。残りは右翼に展開、我々と併走し必要ならこちらに群がる羽蟻を牽制。格闘戦中の敵への攻撃は厳禁、乱戦にだけはするな。そちらの指揮は以後、東風に任せる。」

指示が全隊員に浸透するのを確認する暇も無く、プラズマエネルギーユニットに火を入れ、飛翔する。

「第一、第二は我に続け!二列縦隊形でチャージ!騎兵隊聞こえるか!?振り向かず飛び続けろ!オーバーヒートになっても構わない!」

レイピアを手に必死にエネルギーユニットをだましながら飛ぶ突撃組とペイ子がすれ違うその時、羽蟻達が追いついた。
広範なレイピアの射程内に味方を巻き込まないよう、四人一列にペイルウィングは突入して行った。
先頭が正面に穴を開け、続く三名がそれに塩を塗りたくるように損害を広げる。
それは見ようによっては二匹の蛇が蝿にたかられているようにも見える。

乱戦をすることが適わないペイルウィングにとって、統制の取れなくなった時が最後だ。
ペイ子は必死に首を巡らせて周囲の視界と戦術画面の情報を処理していた。自分がミスすれば後に続く三人がまとめて墓穴に入ることになるのだ。それだけは避けなければならない。
幸運にも、三分の一程の敵がもう一隊の方に流れてくれた。数は少ないので十分処理できるはずだ。逃げ続ける突撃組も距離を離した。後は自分達が予定ポイントまで後退できれば・・・!

空中で噴射される酸は直撃を避けることが出来ても、羽の羽ばたき等で拡散され肌を焼く。電磁アーマーと耐性クリームで守っているものの、長くは持たないだろう。

(もう少し、もう少しだけ持ってくれれば!)

あと二区画程の距離を抜ければ住宅地を抜け、開けた視界の場所に出る。
そこまで行けば陸戦隊からの援護を受けることが適うはずだ。

その時。

ペイ子の後ろに付いている二番手が落とした蟻の死骸が四番手にかすり、姿勢を崩し脱落した。
奥歯を噛み締め、見捨てる。止まるという選択肢は既に失われているのだ。もう少しでゴールだっていうのに・・・!

その時、民家の塀の影から白い影が躍り出た。
あらかじめ用意していた粉末消火器を頭上に放り投げた山城はそれを撃ち抜き、煙幕代わりにする。
脱落したペイルウィングに群がろうとする三匹の羽蟻を瞬く間に打ち落とすと、気絶している隊員を背負って走り出す。
民家の中を抜ける、銃撃、電信柱をスラロームのように駆け抜け、羽蟻どもに有利なポジションを許さずに距離を稼ぐ。

最後の通りを抜け、開けた場所に出た。一面を覆う緑の下草の上に整然と分散配置されたEDF陸戦隊の白がなんとも眩しい。

山城はラストスパートだと言わんばかりに真っ直ぐ傾斜を駆け下り、相川の伏せる塹壕に身を投げ出すと同時に、陸戦隊の一斉射撃が羽蟻どもを薙ぎ払った。
後に続く羽無しの蟻どもも、態勢を立て直したペイルウィング隊との立体十字砲火で駆逐され、ようやく作戦は終わった。

「初戦からこれじゃ、先が思いやられるな」

背負っていたペイルリング隊員を下ろし、一息ついた山城のぼやきを聞いた相川は嬉しそうにこう言った。

「死者、重傷者は0でしたよ。アクシデントはありましたが、それは前大戦でも茶飯事だったじゃないですか?」

そう言えばそうだったと思い返し、ヘルメットを脱いでひっくり返る。情報部が当てにならないのは前からだった。
ビルの上に並び立つペイルウィング隊の一人と目が会った。遠目でバイザーがあるので顔は判別できないが、多分それはペイ子だった。

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